糖尿病を六年間放置

厳しい競争を勝ち抜いてきた企業戦士の生活の縮図ともいえます。高血圧症、糖尿病ともに自覚症状が何もない時期か長く続く代表的な病気です。検診で高血圧、糖尿病を指摘されても仕事を優先してしまうのもうなずけます。しかしこの二症例は自覚症状か出た時はすでにかなり危険な状態だということを証明しています。症例14は約一〇年間、症例15は少なくとも五年間治療を受けずに放置しています。その結果全身の血管系がズタズタになり、合併症が起こったことは間違いありません。ストレス。飲酒、喫煙か拍車をかけたことも事実です。

起きてしまった合併症は仕方がありませんので、今後は定期的に受診して検査を受け、高血圧症、糖尿病をしっかり治療することがまず第一です。そして禁煙、アルコールを減らし、なるべく早く帰って睡眠時間を十分にとり、食事のバランスにト分注意を払う生活がベストですが、厳しい経済情勢ですので周囲がそれを許してくれるかどうかか問題です。

症例16は高血圧を八年間放置、外食か多くビールは大二本、タバコを二〇本吸い、運動らしきことは全くしない、という悪い生活習慣にひたっていました。その結果、二回の脳梗塞発作に襲われました。しかし病状が安定すると、高血圧症の治療こそ続けていましたがまた元の生活に戻り。ある意味では非常に楽天的で楽しい生活を送ったともいえます。つまり「快楽習慣」の「復活」を繰り返していたわけです。この間に全身の血管障害はどんどん進み。狭心症ばかりでなく多発性脳梗塞、さらに脳出血まで起こし、今後の生活はかなり厳しいと言わざるをえません。楽天的で楽しい生活のツケが晩年に一気に回ってきた症例です。

症例17は糖尿病を六年間放置していました。いくら指導しても自分勝手な解釈で聞き流してしまう典型例ですが、糖尿病性腎症が発症して蛋白尿が陽性になり厳しい血糖コントロールと高血圧症治療が必要な時期に本人は来院しませんでした。管理職になって忙しかったのかもしれませんが、奥さんの代理受診(薬だけ取りにくる)が三年間続き、この間に糖尿病性腎症が悪化、腎機能がおちてきました。

入院を勧めましたが拒否、二年後にやっと入院となりました。生活習慣を大幅に改めるように指導しましたが、またまた自分に都合がいいように解釈して元の生活に戻りました。当然の帰結ながら、糖尿病性腎症が悪化し透析か必要になるばかりでなく、糖尿病性網膜症による失明の危険にさらされています。この症例は医療スタッフの助言を右から左へ聞き流し、白分流の生活習慣を変えようとしなかったために最悪の結末になってしまった代表例です。