自己血糖測定法を習得

独身、自由、離島ののんびり生活が裏目に(男性・初診時32歳)Jさんは独身の中学校教師、人当たりの良い好青年です。1987年頃からロ渇感があったようです。検診で糖尿病(空腹時血糖295、172センチ、77キロ、BMI26)を指摘され、89年5月(32歳)当科を初診しました。食事指導を行ったところ、長い間朝食は抜き、昼食は適当に食べ、夕食はビール大2本を飲みながら必ず外食、運動らしきことはしない、という生活をしていました。

栄養士が1日摂取エネルギー量2000キロカロリー以下、朝食を必ず食べるように指導し、まだ32歳と若いので投薬はしないで経過を観察しました。91年3月朝食を食べるようになったことと飲酒量が多くなったことで体重が85キロに増加、当然空腹時血糖も249と高くなりました。とりあえず空腹時血糖200以下。体重80キロ以下にするよう指示しましたが、独身で自由気ままな生活、なかなか達成出来ません。93年8月、夏休みを利用して2週間入院、経糖尿病薬による始療を開始しました。しかし退院して4ヶ月で空腹時血糖200以上となり、94年8月に2度目の入院。退院時空腹時血糖131、3ヶ月後にはまた200以上。外来でいろいろと注意はしましたが、独身で気ままな生活だから仕方がないか、と主治医の私も諦めているところがありました。

96年4月から離島に勤務、のんびりとした生活が気に入っているようでした。97年8月定期受診、空腹時血糖22、かなりの酒を飲んでいました。3ヶ月に1回は受診していましたが、空腹時血糖は常時200以上、飲酒量が多く、血糖をコントロール出米そうもないと告白していました。98年8月3度目の入院。眼科医から、糖尿病性網膜症が悪化しており、網膜にしみ状出血が多発しているとの診断があり、のんびりやのJさんもショック、本気で血糖コントロールに取り組むようになりました。入院中に自己血糖測定法をマスターし、島に戻ってからも血糖値をほぼ毎日測定、酒を減らし、嫌いな運動も毎日やっています。

99年2月、空腹時血糖、164、糖化ヘモグロビン6.1%。悪い時に比べると糖化へモグロビンが下がっていますから、血糖値に換算すると100以上、下がったことになります。本気になるのが遅れましたが、網膜症の悪化が止まってくれるよう順っています。9月の受診時に、2000年4月から東京に戻ってくる予定だと言っていました。学級崩壊を起こしている中学校も多く、中堅の男性教師にかかる負担は非常に大きいと聞いています。ストレス、会合、飲酒の誘惑、全てが増えることは間違いありません。どうやったら乗り切れるのか今から心配ですが、東京に戻ってきたらじっくり話し合ってみようと思っています。

症例9、症例10では飲酒が大きな問題になっています。職場の中堅になると接待、打ち合わせなどの会合が増え、どうしても飲酒の機会が多くなります。酒が強いことを周囲が知っている場合には断るのは確かに難しいと思います。また酒が入って食べ始めたらブレーキがきかない人もたくさんいます。職場の中心的立場にあると不義理もできないのも確かですから、アルコールは会合の時だけ一定量(ビール2本程厦)飲む、家での晩酌はしない、飲酒をした翌日は1時間よけいに歩く、など自分なりのルールをつくり、忠実に実行することが大きい切です。そして検査データと照らしあわせながら、自分の生活のルールを変えていく必要があります。