ラザフォードとボルトウッド

地球を構成する物質のなかに放射性元素がふくまれているとしたら、トムソンの地球の冷却の計算は無意味になる。彼の計算にはふくまれていなかった熱源が存在することになるからである。実際、ウラン鉱のように特別にウランが濃縮した岩石以外にも、地殻を構成する岩石には放射性元素がふくまれていることが明らかにされた。

トムソンは地球の熱がほとんどすべて、初期の溶けた状態から供給されるとした。しかし、もし地球が十分な熱量の供給源である放射性物質を内部にふくんでいるとしたら、これまでの地球の冷却をもとにした方法は、すべて誤りだったことになる。一九〇三年G・ダーウィンとジョリーが、はじめてこうした主張を展開した。

はたして地球の内部には、十分な量の放射性物質が存在するのだろうか。地殻の岩石中に放射性元素がふくまれていることは前に述べた。R・ストラットは当時多くの岩石中に微量のラジウムを発見した。その濃度から考えると、ラジウム放射能だけでも、地球内部の熱をすべて説明できるくらいのものであった。この結果、地球の年齢は再び無限にまで引きのばされることになった。

放射性元素はある一定の割合で崩壊し、別の化学元素に変化する。その半分が崩壊するまでの時間が半減期である。半減期はそれぞれの放射性元素により異なり、数十億年から一秒以下のものまで。さまざまである。ウラン、トリウム、ラジウムは長い半減期をもち、したがって現在でも地球に存在する。短い半減期をもつ元素は一時的にしか存在しない。つまり、ある特定の元素が存在するかしないかが、岩石の年齢についての手がかりをあたえることになる。放射性元素の発見は、それまでの基準であったトムソンの地球年齢の推定法を否定しただけではなく、それにかわる新たな方法を提示することになった。

この分野を開拓したのは前述のラザフォードとB・ボルトウッドである。ボルトウッドはエール大学を卒業後、ウランやトリウムをふくんだ鉱物の分析に従事した後、放射性元素の崩壊系列について研究した。ラジウムがウランの崩壊系列の生成物であることは当時すでに知られていたが、一九〇五年、ボルトウッドはこの崩壊系列の最終生成物が鉛であることを指摘した。