金利負担の抑制

代表訴訟リスクを回避するためだけに、裁判所の判断を仰ぐのは不適切と考えました」と述べました。TCIの平均買いコストは4585円でしたが、円高が進展したため、TCIの英ポンド建ての損失はそれほど大きくなかったと推測されます。2005年10月に楽天は、放送とネットの融合を目指して、TBS株の15%を取得して、経営統合を提案しました。2007年2月に楽天はTBS株を20%強まで買い増して、持分法適用会社とする意向を表明したのに対して、TBSホールディングスは買収防衛策を採用したうえ、2008年12月の臨時株主総会では、放送法上の認定放送持株会社への移行が承認されました。

認定放送持株会社になると、1株主は33%の株式しか取得できないため、楽天による経営統合は不可能になりました。2009年3月末に楽天は、保有するTBS株のすべてをTBSに買い取るように請求しました。TBSは楽天が買取を請求した3月末の株価の1294円での買取を提案したのに対して、楽天は平均取得価格に近い3000円超を主張し、両社の主張は平行線をたどったため、両社は東京地裁に買取価格の決定を申し立てました。

買取請求を受けたTBSには年6%の金利負担が発生しました。2009年7月にTBSは決着までの金利負担を抑制するために、楽天に400億円を前払いしました。2010年3月に東京地裁はTBSの主張を支持して、買取価格は1294円との決定を下しました。楽天は地裁決定を不服として、すぐに東京高裁に即時抗告を行いました。TOBは厳格なルールの下で行われるTOBの略で、日本語で株式公開買付と呼ばれます。上場会社の株式を不特定多数の株主から大量に買い集める場合に、すべての株主に平等に売却機会を与えるための制度です。

金融商品取引法で、発行済株式数の3分の1超を買い付ける場合には、原則TOBの実施が義務づけられます。事前に買付者から、買付価格、買付株数、買付期間、目的などが公表されます。買付者は買付予定数を指定し、応募株数が買付予定数を上回った場合には、按分比例方式で、買付予定数を超える部分の全部または一部を買わなくてもよいとされています。逆に、応募株数が予定数の下限に届かない場合は、全部買わないという選択もできます。買付後の所有割合が3分の2以上になるTOBの際には、応募株式のすべてを買い付けなければなりません(全部買付義務と呼ばれます)。

買付価格は均一でなければなりません。買収対象の企業が株式分割新株予約権の無償割当などを行った場合を除いて、買付価格の引き下げはできません(引き上げることはできます)。買付予定数の減少や買付期間の短縮もできません。TOB開始以後に、買収対象の企業が、合併や解散、破産の申し立て、会社分割、株式交換などを行った場合を除いて、公開買付を撤回することはできません。TOBは会社の支配権獲得を目指して、大量に株式を買い付ける行為ですので、厳格なルールの下で行われます。