まったく別の付加価値をセールスポイントにする

英語力は、一昔前までは社会人・企業人の大きな武器であった。企業は英語力に長けた人材を高く評価し厚遇した。しかしいまでは、英語力はさはどのアピールポイントにならない。「できて当たり前」と見なされるようになり、企業はプラスーアルフアの能力を求めている。もちろん、レベルの問題はある。英語で欧米人と対等にディスカッションやハードな交渉ができる人材はまだまだ少ないので、きわめて高度な英語力を持つ者の価値は依然高い。だが、ひととおりのビジネス英会話ができる、ビジネスレターが書ける程度の英語力は、さはどの「売り」にはならなくなっている。

SEの技術や知識も同じ道をたどりつつある。SEが持つ基本的な知識や能力は、いまや一般人が常識として身につけつつあるのだ。実際、SEでもなんでもない一般人が、インターネットでホームページを開設し、Javaなどの言語でプログラムを開発し公開しているし、Visual Basicなどパソコンでも手軽に利用可能なプログラム言語を習得している者も多い。仕事ではなく、趣味の世界でプログラムを組んでしまう時代になっているのである。

コンピュータ知識や技術も英語力と同じように、ある程度のレベルまでなら誰でも備えている時代が必ずやってくる。そのような時代では、もはやSEの技術や知識はたいしたスキルではなくなる。持っていて当たり前の、普通自動車免許のようなものだ。だから英語力と同じように、身につけた技術を徹底的に高度化するか、まったく別の付加価値をセールスポイントにするしかない。

日本国民総SEとまではいかないが、それに近い時代は必ずやってくる。SEが専門技術職である時代はもはや終わりつつあるのだ。個性の塊であることが最大の武器になる。なにごとでもそうだが、個性は最大の武器になる。自分にしかできない仕事の領域や、自分にしか達成できない仕事のクオリティを持つことは、他者との最大の差異化になる。

専門技術を極めろと言っているわけではない。発想や行動様式に独創性を持ってほしいと言っているのである。企画会議があれば、出席者全員が同じ意見を述べるのではなく、そのなかでひとりだけでも違った意見を述べてほしい。あまのじゃくでよいのである。あえて人と違ったことをやることで、考え方や行動が変わり、自分独自の世界への道が拓ける。